私が不動産エージェントビジネスの構想を考えたのは、ハウスクローバーを設立する4、5年前ほどにまで遡ります。
アメリカでは不動産エージェントという単語が定着していましたが、日本ではかなりのニッチワードで、この単語を検索するのは不動産関係者くらいなのでは?というくらいでした。
もちろん、このビジネス構想を何人かに話はしたものの、反応はよくありませんでした。
ビジネスモデルとしての成熟度はもちろんですが、今思えば時代が早すぎたのかもしれません。
不動産エージェントという単語
このように数年前までは完全なニッチワードだった「不動産エージェント」ですが、ここ最近は如実に雰囲気が変わってきているなと感じます。
実際Google広告に備え付けられているツール「キーワードプランナー」で不動産エージェントというキーワードがどのように推移したのかを調べてみました。
Google検索での伸び
過去2年間しかデータを見ることができませんが、かなりの伸び率を見せていることがわかると思います。
とはいえ、PCとモバイルと合算で月の検索数が1600なので、まだまだニッチワードには変わりありません。
Googleサジェストで現状を推測する
それでは今度は検索エンジンに「不動産エージェント」と入力した後に予測として出てくるサジェストを見てみましょう。ツールを使って確認すると
- 不動産エージェント 副業
- 不動産エージェント 評判
- 不動産エージェント 年収
- 不動産エージェントという選択
- 不動産エージェント おすすめ
- 不動産エージェントになるには
- 不動産エージェント 集客
- 不動産エージェント 大阪
という結果でした。これだけ見るとまだ消費者に広がっているというよりは、業界関係者やこれから不動産エージェントを始めてみたいと考えている人たちが検索しているようです。
ただ、昔のデータは残っていないものの、私の記憶では「不動産エージェントとは」「不動産エージェント アメリカ」などといったより抽象的なキーワードが多かったので、その時から考えると明らかに量だけでなく質も変わりつつあると実感します。
不動産エージェントビジネスはニッチからスタンダードへ
今、不動産エージェント産業は徐々に盛り上がりを見せてきています。
まずはシリーズBで10億円を調達した「Terrass」さんを始め、5年ほど前に日本に上陸した世界三大不動産FCの「Re/Max」さん、そして2021年に丸紅と組んで日本に上陸した同じく世界三大不動産FCの「Keller Williams」さんなど、日本のベンチャーだけでなく世界クラスの企業まで日本に進出してきています。(ちなみに最後の一つの世界三大FCはCentury21で、こちらはどちらかというと日本の従来型にローカライズしています)
今ご紹介した企業は、どれも宅建業免許を持つ不動産業者ですが、従来型の不動産業者との違いは、営業を社員などで雇用するのではなく、個人事業主のような契約で自由な働き方を推進しています。保険の営業マンと考えるとイメージしやすいかもしれません。
これはアメリカ式の不動産ビジネスの典型的な形態となっており、アメリカでは営業のことを「エージェント」、そして宅建業者にあたるのが「ブローカー」と呼ばれる事業者です。
働き方改革によって、副業が当たり前になり、また女性のスキル活用としてアメリカのブローカーモデルは非常に相性の良いビジネスモデルです。
一つ懸念があるとすれば、宅建業免許の要件となっている「5人に1人は専任の主任士であること」という条件が、この新しいビジネスモデルとどう折り合いをつけるのか。
働き方改革という進化をとるのか、過去の古いルールを重視するのか。この辺りの判断が今後の不動産エージェントビジネスに大きな影響を与えそうです。
専任の宅建士とは、「常勤性」と「専任性」の二つの要件を満たすこととされています。つまり当該事務所に常勤して専ら宅建業の業務に従事することが必要となり、兼業の宅建士は専任とみなされません。しかしリモートワークがコロナ禍で普及したことによってこの常勤性も形骸化している気がします。
中小零細企業の業者も不動産エージェント
先ほど紹介したブローカーに所属する不動産エージェント以外にも、私は中小零細企業の社長が1人で営業をしている、もしくは営業部長がもう1人いて事務員がいて、のような会社の社長や営業部長も広義の意味で不動産エージェントであると思います。
会社が集客をするのではなく、個人のネットワークを駆使し、数字を作り上げていくという行為は、個人で働く不動産エージェントと何ら変わりがありません。
またコンビニの数より多いと揶揄される不動産業界ですが、社長を入れた従業員5人以下の不動産業者は全体の85%ほどと言われています。
未来の不動産エージェントビジネスはどうなる?
私個人的な見解ではありますが、不動産エージェントビジネスは間違いなく拡大していくと思います。
そもそも私自身、不動産業界に15年近く在籍し、多くのお客様と接してきていますが、なぜここまで不動産エージェントビジネスが広がるかというと時代が求めているからです。
働き方改革によって多様な働き方を求めることができるようになった不動産エージェント側だけでなく、消費者にとっても自身の利益を守ってくれる担当者から家を買ったり売ったりしたいというニーズが高まってきています。
youtubeなどのSNSによって、これまで一般の消費者が知らなかった不動産業界の裏側が明るみにでたことも要因としてあると思います。
AIで不動産仲介はなくなるのか?
最近ではAIの発達によってなくなる職業として不動産仲介業が挙げられることもありますが、いくらIT化が進んでも、高額商品であり、個別性が強く、時として高度なコミュニケーション能力が求められる不動産売買仲介という職種は、この部分でなくなることはありません。
不動産という商品こそ、実は属人性がもっとも高いと考えています。
一方で、物件を紹介するだけ、自社の利益ばかり追求するような従来型の不動産仲介業者は間違いなく淘汰されていくでしょう。
最終的には、財閥系や鉄道系などの大手系仲介と、宅建業をもたずに活動する個人エージェントが所属するブローカー(Terass、Re/Max、KWなど)、そして不動産エージェント化の波に乗ることができた中小零細の3つのプレイヤーが残っていくと考えています。
不動産エージェントが拡大するための課題
今後、不動産エージェントがより拡大していくために欠かせないものの答えが実は、先述のGoogleサジェストに隠されていました。
勘の良い方はもしかしたら気がついていたかもしれません。それは「集客」です。
個人の不動産エージェントに限らず、中小零細企業にとって「集客」が最も重要な課題となります。
この文脈になってようやく弊社のサービスをご紹介します。
ハウスクローバーは消費者から見れば全国の優良な不動産エージェントを探すことができるプラットフォームですが、不動産業界から見ると「集客のプラットフォーム」な一面も持ち合わせています。
もちろん個人での契約も可能で、先述したブローカーに所属する不動産エージェントの方も掲載されています。
こういう意味で、ハウスクローバーは実はどの不動産エージェント系企業とは競合しない関係で、むしろ補完的な関係となります。
まずは物件から探すのではなく、人から探すということを当たり前の世の中にしていくために、様々なプレイヤーが活躍・発展していくことこそ、今は何よりも大事なのではないかと考えています。